一歩前へー片腕のギタリスト・輝彦さんから教わる、生きるということ
オレンジのギターと和装がトレードマーク。左の腕だけで技巧のメロディを奏でるギタリスト・輝彦さん。NHKのドキュメンタリーにも出演し、東京パラリンピックの閉会式では、その姿とギターの音色を耳にした方も多いのではないでしょうか。
挫折と葛藤を乗り越えて
28歳でプロデビューした輝彦さんが病に倒れたのは、36歳のとき。それが原因で右半身の自由がきかなくなり、ギタリストとして活動することは困難だと告げられました。一時は輝彦さん自身もプロの道を諦めかけていました。
しかし退院時、作業療法士さんとのギターについての何気ない会話をきっかけに、あらためてギターと向き合うことを決め、約5年の歳月をかけステージに復帰しました。
「ギターを弾くには体幹が必要です。体幹が弱かったので座ることができず、立って演奏する方が効率が良いと考え、まずは、立つ練習からスタートしました。演奏する時間を意識して、とにかく立つだけ。そこまでできるのに半年かかったんです。その後、ギターを持って立てるようになるまで更に3ヶ月。一つ一つの動作が続けられるようになるために、地道なリハビリを続けました。」
そうにこやかに語る輝彦さん。
しかし、気の遠くなるようなリハビリ期間は決して順風満帆ではなく、沢山の葛藤や挫折があったそう。試行錯誤の末、ピックを使わず左の指で弦を叩いて演奏するスタイルを、この頃に確立していきます。
新たな使命を胸に
「初めは人前で演奏するのも躊躇っていました。たまたま、リハビリしている病院内の患者さん達の前でギターを演奏する機会をもらったんです。当時はまだプロとして完璧な演奏だと胸を張って言える状態ではなかった。
でも、そこには自分の演奏を聞いて涙を流して喜び、応援してくれる人たちがいたんです。自分がやってきたことが、こんなにも勇気を与えることができるんだと感じました。」
それが転機となり、片腕で音楽を奏でるギタリストとして活動していく使命を新たにします。
病院だけでなく学校や企業などの数々の講演・演奏活動を行い始めた矢先、オリンピック・パラリンピックの東京開催決定の知らせが。運命を感じた輝彦さんは、その舞台で演奏することを目標に掲げます。そして、2021年、それを実現させてしまうのです。
演奏活動への想い
一見華々しくも、愚直に地道に、時に苦しみながら自身のスタイルを確立し夢をかなえた輝彦さん。
演奏を通じて、少しでも多くの人に勇気を与えたいという想いで講演・演奏活動を続けており、全国から依頼が殺到しています。
そんな輝彦さんの人生が詰まった講演・演奏を、9月29日(日)と11月2日(土)に逗子文化プラザ市民交流センターで行う予定です。当日にむけた想いも語ってくれました。
「私は、"生きる"をテーマに講演・演奏活動を続けています。
オリジナル曲である"願蛍(ねがいぼたる)"の演奏に加え、夢であった東京パラリンピックの舞台裏などの紹介も交えながら、自分なりの"生きる"というメッセージを伝えたいと思っています。」
輝彦さんにとって"生きる"とは
「"一歩前へ"出ていくことだと思います。どんなに小さな一歩でもいい。そして、一歩前へ踏み出すために、自分だけでなんとかしようと頑張りすぎず、他の人の力を借りること。
人は苦しいとき、心や身体に傷を負ったとき、そもそも前に踏み出す余裕もなくなります。でも、少し立ち止まって、周りを見てみてほしい。苦しいと声をあげてほしい。きっと、色んな人が手を差し伸べてくれるはずだから。
そんなメッセージを、この講演・演奏を通じて伝えていければと思っています。」
そんな強く優しい想いを胸に活動を続けている輝彦さんだからこそ、多くの人の胸を打ち、夢であった東京パラリンピックの演奏も実現できたのでしょう。
イベント情報
片腕のギタリスト・輝彦さんの講演・演奏は、9月29日(日)、11月2日(土)に逗子文化プラザ市民交流センターにて開催予定です。
YouTubeなどの動画配信も行っている輝彦さんですが、ぜひその音を生で感じてみてください。
逗子文化プラザへのアクセス
【逗子文化プラザ 市民交流センター】
◼︎住所: 逗子市逗子4丁目2-11(JR逗子駅より徒歩7分)
◼︎電話: 046-872-3001