【藤沢 イベントレポ】世界一周中の元英語教師、旅の学びを語る~飯塚直輝お話会
旅は日常では得られない気付きをもたらすことがあります。
元鎌倉学園の教員で、世界を旅しながら各地の教育施設で子どもたちに英語や日本語の授業をし、夏休みや春休みには中高生向けのスタディーツアーを主催している飯塚直輝(いいづか・なおき)さんが一時帰国、お話会を開催すると知り、さっそく参加を申し込みました。
各地で出会った人々を見て気付いた「幸せそうに生きる人たちの共通点」や海外の教育事情について、興味深いお話を伺ってきました!
飯塚直輝さんはこんな人
飯塚さんは私立鎌倉学園中学校・高等学校で12年間、英語教員として勤務。退職後に東京都檜原村でフリースクールの立ち上げを行い、今年3月に念願だった世界一周の旅に出発しました。
今回はスタディーツアーに参加した生徒さんを日本まで送り届けた機会に、旅で気付いた学びをシェアすることを目的にお話会を開催したというわけです。
友達同士で参加したという鎌倉学園の生徒さんたちは「飯塚先生の授業は画期的なものでした。普通の先生じゃないです(笑)」と言います。
皆さん飯塚先生が大好きで「いま先生がどんな考えでいるのか、話を聞くのが楽しみです」と話してくれました。生徒さんたちにとっては、いい刺激を与えてくれる、兄のような存在です。
いよいよお話会スタート!
会場は約20名の出席者で満席です。お話のメインはフィリピンのカオハガン島に暮らす人々の生活について。
カオハガン島は、フィリピン・セブ島沖にある、人口約700人の小さな離島です。水道はなく、生活用水は雨水を使用。ガスもなく、調理にはたき火を使用している家庭もまだあります。電気も、ソーラーパネル発電に頼っているそうです。
そんなカオハガン島の人たちについて、飯塚さんは
「とても幸せに見えるんですよ。何でこの人たちはこんなに幸せなのかなって考えました。それを皆さんにシェアするのが、お話会の一番の目的です」
と今回のお話会を開いた理由を説明しました。
*なお、お話会の趣旨については
今回はカオハガン島の話を中心にしましたが、「日本はカオハガン島の生活を見習うべきだ」的な二項対立的な構図で国の優劣をつけることにならないように、気をつけてお話をさせていただいたつもりです。僕は「日本の社会を変えたい」みたいな、大きな野望は持っておりませんし、その力もありませんが、僕が世界で見たものを皆さんにお伝えすることで、少しでも子育てや教育現場で苦しんでいる方々、そして今を逞しく生きる子どもたちが、別視点を持ち、楽になったり、誰かに優しくなれるような気持ちになれば、嬉しいです。
サンセットタイムは、皆でビーチに集まって一緒に過ごす
カオハガン島では、毎日夕方4時頃になると、人々が学校や仕事から戻って海岸に集まります。
皆で歌を歌ったり、ドッジボールやバレーボールをしたり、波の音を聞いたりしながら夕日が沈むまでのんびり過ごすのだそう。
フィリピンに限らず、いろいろな国で同じような時間の過ごし方をしている国があるそうです。
ポイントは、そこで普段交わらない大人と子どもが一緒に過ごす機会が生まれること、また大人は仕事や学校の疲れをリセットして家に帰れることです。
「皆が一緒に“のほほん”とできる場所があって、夕日が沈んで、いいなあと。そんなことを思いました」
島民は全員が家族
カオハガン島では全員が家族。子どもたちはどの家に泊まってもいいし、どこでご飯を食べてもいい。
大人たちも、どの家の子が来ても受け入れるし、逆に忙しい時は気軽に子どもの預かりをお願いできる。これが、カオハガン島のコミュニティーです。
子育てがしやすいので、子どもの数も多いのだとか。
何とか生きていける安心感
カオハガン島の周りの海では海産物が豊富に捕れます。ですから、お金がなくても魚を捕れば何とか暮らしていけるという感覚を皆が持っているそうです。
生活の不安がないからか、学校に行っていない子どもも全く悩んでいる様子が見られなかったとか。
飯塚さんは「何とか生きていける安心感」について、バリ島でも同じことを感じたと言います。
「バリ島の子どもたちは高校を卒業するまでに、コーヒーの淹れ方やベッドメイキングの仕方など、観光業で働ける術を実習形式で学びます。卒業と同時に、島で一番盛んな産業で働ける状態になっているのです」。
もちろん、観光以外の仕事を希望する子もいます。けれども、万が一希望が叶わなかったとしても、何とか働いて食べていける状態でいられるのは心強いもの。
「このセーフティーネットの存在は最強だと思います」
環境に自分を合わせるための知恵とは
魚を食べれば何とか生きていけるカオハガン島では、肉より魚を好きになったほうが生きやすい。そのため「(肉よりも)魚を食べたほうが体が強くなる」という迷信があるのだそう。
非科学的な話ですが、島民は理屈よりも安心して暮らしていくことを優先させていると飯塚さんは言います。
環境を無理に変えようとせず、考え方を変えて自分のほうを環境に合わせる。この「受け身」の考え方こそ、ガスも水道もない島で幸せに暮らしている人たちの幸せの秘訣(ひけつ)なのです。
飯塚さんは「ただし、どうしてもその場所が合わないなら出て行くこともできる。その道を残してあげるのは大事なポイントかもしれません」と補足します。
お話会では他にも、バリの養護施設「SOS Children's Village」やネパール山中の学校など、各地の子どもたちの様子が紹介され、居ながらにして世界一周旅行の気分を堪能しました。
質問タイム
最後は参加者からの質問コーナー。全員スクリーンに映し出された2次元コードをスマホで読み込み、アプリから質問を送ります。
参加者からは「外国にコンビニエンスストアはありますか?」「見て回った国々の教育現場と日本の教育現場の違いは?」などたくさんの質問が出ました。
ちなみに、タイのバンコクには50メートルごとにコンビニエンスストアがあるそうです。
また「ネパールやカンボジアの学校では、先生が書いた板書をただ書き写すだけの授業が一般的。だから皆、字がとてもきれいなんです。それに比べると日本の教育レベルは高いと感じます」という回答でした。
ランチ会で参加者と交流
終了後は近くのレストランに移動しての昼食会です。参加者は飯塚さんに個別で質問したり、参加者同士で交流したりして、楽しい時間を過ごしました!
今後の予定
飯塚さんは、9月から再開する世界一周旅行で、小中高生向けのオンライン授業「Naoは世界のどこにいる?(南アジア、中央アジア、西アジア、東欧編)」を行います。この授業は世界のどこかにいる "Nao" が、その国の文化を紹介し、実際に街歩きをしながら現地の人々と日本の子どもたちをオンラインでつなぐ授業です。(問い合わせ:Peatix|Naoは世界のどこにいる?)
また、2024年3月にカオハガン島、8月にはバングラデシュへのスタディーツアーを予定しているとのことです。
詳細は下記関連リンクからお問い合わせください。
イベント紹介
■開催日:2023年8月6日(日)
■開催場所:鵠沼橘市民の家
■料金:500円
■時間:10:00~12:00
施設情報
【鵠沼橘市民の家】
■住所:〒251-0024 神奈川県藤沢市鵠沼橘1-14-7
■電話番号:0466-50-3516(藤沢市役所 市民自治部 市民自治推進課)
■営業時間:原則として12月29日から1月3日を除く通年
午前の部 午前9時~午後1時
午後の部 午後1時~午後5時
夜間の部 午後5時~午後9時
※駐車場なし
地図
アクセス
藤沢駅から徒歩7分
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