【藤沢 学校レポ】どんな世界でも生き抜く力を育む学校~湘南ホクレア学園(前編)
江ノ電湘南海岸公園駅から徒歩3分。境川の近くにある1軒の古民家が、湘南ホクレア学園(以下ホクレア)です。
自律と共生を学ぶ「イエナプラン教育」をベースに、英語でバイリンガル教育を行うユニークな学校が誕生したと聞いて、取材してきました。
今回は前編・後編の2本立て。前編は授業の様子を、後編では理事長のインタビューをお届けします。
湘南ホクレア学園とは
ホクレアは、2022年4月に開校した、6歳から15歳が通うオルタナティブスクールです。教育コンセプトは、ドイツで発祥しオランダで発展したイエナプランを採用、そこに日本の学習指導要領を取り入れています。
「どんな世界でも生き抜く力を持った子どもを育む」ことを建学の精神とし、サバイブするための3つのスキルを軸にした教育を実践しています。
湘南ホクレア学園の特徴
大切にしている3つのこと
・世界中に仲間をつくる
・自分で決める
・リミッターを外す
育む3つのスキル
・コミュニケーションスキル
・起業スキル
・アウトドアスキル
子どもたちが登校してきました。当日は快晴。境川の川沿いをジョギングする人が行き交う、静かな朝のスタートです。
こちらがホクレアです。玄関にはホクレアのロゴマークを描いたのれんが掲げられています。
サークルタイム(朝の会)
*生徒さんたちの写真は湘南ホクレア学園から掲載許可を頂いています。
まずは朝のサークルタイム(朝の会)です。全員で輪になって話をします。
"Today is Monday."(今日は月曜日)
"What is today's Lunch?" (今日のお昼は何?)
キャプテンのMIWAさんが、日本語と英語を混ぜながら会話をリードしています。ホクレアには先生がいません。子どもをサポートする大人のことを、ホクレアではキャプテンと呼ぶのです。MIWAさんも含め、全員がファーストネームで呼び合っています。
英語で会話していますが、分からなければ日本語で質問してもいいので困っている子はいないようです。皆、キャプテンの言うことを理解していました。
サークルタイムの次はプランニングタイムです。月曜日には、1週間の学習計画を立てる時間があるのです。
キャプテンが各自の努力目標を読み上げながら、学習計画が入ったファイルを1人ずつ手渡ししていきます。
子どもたちは、自分で考えた1週間の学習計画を、PDCAカードと呼ばれる紙に書き込んでいます。
1年生の1~2学期まではキャプテンと一緒に考えますが、要領がつかめてきた3学期からは、子どもが自分で考えるそうです。
イングリッシュタイム(英語の時間)
English Time(英語の時間)です。今日は朗読の練習をしています。
この朗読は、保護者の前で披露する予定だそうです。
子どもたちは各自1台ずつタブレットを持ち、英語の学習アプリで勉強しています。
画面に絵本が表示され、音声読み上げ機能に従って音読を練習。絵本の文章を紙に書き写す練習もしているようです。
練習が終わったら、1人ずつ発表していきます。「ただ文章を読むんじゃなくて、人に聞かせる読み方をしましょう」時折、キャプテンの指導が入っていました。
子どもたちは、スラスラ読んでいます。
MIWA 「どんなふうに変えたら、もっと良くなると思う?」
子どもたち 「もっと楽しく。声のトーンを変えたらいいと思う」
お互いに感想を述べながら、練習が進んでいきました。
ワークタイム(個別学習の時間)
次はWork Time(個別学習の時間)です。この時間では、主に英語、国語、算数を学習します。
"Go, get your pencil case."
(筆箱を取ってきて)
"You can spread out."
(広がっていいよ)
各自、自分で立てた計画表に従って、教材に取り組んでいます。
国語では、テキストやプロジェクト学習関連の作文を書きます。読書量を増やすために、全員で市内の図書館に定期的に行くこともあるそうです。
算数は、英語の算数アプリを使い、各自のペースで個別学習します。
窓辺の机で座って勉強する子、小机に正座する子、立って勉強する子など、各自好きな姿勢で勉強しています。
90分は長いので、途中で外に出て気分転換してきてもいいそう。
子ども同士で時折おしゃべりしていますが、キャプテンはすぐには注意しません。学習態度については、各自が話し合って目標を立てるようにしているそうです。
「大人はあくまでもヘルプに徹します。異年齢学級なので、高学年の子が下の子に勉強を教えることもあります」とMIWAさん。部屋を巡回しながら、学習のフォローをしていました。
N君は
「音楽の時間はいろんな国の曲をやるんだよ。地球儀を回して、目を閉じて指さした国の曲をやるの。それが好き」
と教えてくれました。
皆で作った、ろうけつ染め。
「ホクレア大好き。休みたくない! 自分で勉強できるから楽しいし、いろいろなことができる」
K君は、言わずにはいられないといった様子です。
MIWAさんは、自主性が大事だと言います。
「中には何でも自由だと勘違いしてしまう子もいます。そんな時は、相手のことを考え、チームをつくるために自分を律する必要があることを話し合っています。
ホクレアでは子どもが自分たちでルールをつくり、大人は助言に徹するんです。
大きい子が助けてくれるし、保護者とも密に連絡を取り合うので、子どもは確実に良くなっていきます」
お楽しみのランチタイム!
12:00になりました。いよいよLunch Time!(給食)。今日のメニューはポークソテー、コールスロー、みそ汁です。
以前に飲食店を経営していたという方が、給食を作っていました。
「調味料やお米はオーガニックの商品を選ぶようにしています。毎月1カ月分の献立を立てますが、油と卵の値上げが大きく、やりくりするのが大変です」とさまざまな工夫を語ります。
「ここに入った時はお肉とごはんだけしか食べられなかったの。でも、ホクレアのごはんがおいしいから野菜も食べられるようになったよ!」
R君は、大きな声で言いに来てくれました。
プロジェクト/STEAMタイム(総合学習の時間)
午後はSTEAM or Project(科目横断的な総合学習の時間)です。これはチーム学習の時間で、今日は習字に挑戦します。学年に関わらず全員で取り組むので、低学年も参加します。
2グループに分かれて座り、スタッフが各グループに1人付いて道具の置き方や使い方を指導します。
"Sit down and eat the paper!"
(座って、紙を食べなさい!)
男の子が皆を笑わせています。英語の冗談もなかなか板に付いていますね。
MIWAさんが書いたお手本(筆使いの基本を学べるよう工夫して作ったイラスト)の上に半紙を置いて、上からなぞる練習です。
「小学1年生でも、なるべく楽しくできるように工夫しています」とのことでした。
サークルタイム(終わりの会)
子どもたちが作ったホクレアの歌
習字が終わると、14:30になりました。再び輪になって座る、Circle Time(終わりの会)です。
MIWAさん 「明日はホクレアの歌(校歌)を練習するよ」
子どもたち 「ヤッター!」
校歌は子どもたちとスタッフが一緒に作ったものです。元気な歓声で一日が終わりました。
"That's all for today."
(今日はこれで終わります)
まとめ
得意な科目は自由に伸ばし、苦手な科目は最低限の目標を決めてゆっくりと学んでいく。
自分たちでルールをつくることで決まりごとの本質を理解し、納得した上で自発的に守る。
スタッフは保護者と密に連携して子どもたちを見守り、何度でも問題を話し合う。
手厚いサポートのたまものでしょうか、子どもたちは積極的で、のびのびと学んでいます。
高学年に限っては公立学校と併用もできるそうで、週2回は地元の公立学校に通い、週3回だけホクレアに来ている子もいるとか。
「この学校では、私が一番楽しんでいます」とMIWAさんは言います。
学校全体が穏やかな空気に包まれ、皆が幸せそうな表情をしていたのが印象的でした。
<後編は理事長のインタビューです>
学校紹介
【インタナティブスクール 湘南ホクレア学園】
■住所:〒251-0032 神奈川県藤沢市片瀬4丁目16-22
■電話:0466-66-8626
アクセス
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