【鎌倉 学びスポットレポ】海遊びで育つ豊かな心~湘南・海のようちえんスイミーズ
湘南の海をフィールドに活動する、海のようちえんが今年4月に誕生しました。立ち上げたのは、外遊びを主体に親が自ら保育を行う「青空自主保育」の保育者として20年のキャリアを持つ、馬場由利枝(ばば・ゆりえ)さんです。
彼女が引退前の最後の挑戦に選んだフィールドは海。ウィンドサーフィンの大会に出場経験のある、海が大好きな馬場さんにとっては自然な選択だったのでしょう。
遊び道具がなくても、自由な発想で新しい遊びを生み出す子を育てていると聞き「湘南・海のようちえんスイミーズ(以下スイミーズ)」で過ごす子どもたちの日常を取材させていただきました。
湘南・海のようちえんスイミーズとは
スイミーズは、今年4月にプレスタートし、6月から本格始動した園舎を持たない海のようちえんです。湘南の海や山など、自然の中で活動しています。未就学児が対象ですが、兄弟は0歳から小学生まで参加可能。
青空自主保育と違って親の当番等はなく、預かり保育です。ただし土曜日は原則家族参加で、その他にも月1~2回保護者参加の日があります。
保育日は週4回(火・水・金・土)で、土曜日は海や田畑で活動しているとのこと。子どもの見守りは常勤の馬場さんの他に、専任の保育者2名とボランティアスタッフ、有志の保護者が交代で担当しています。
馬場さん(写真)は、青空自主保育の保育者として子どもたちを20年以上見てきました。
青空自主保育とは、1970年代に東京で始まった「自主保育」活動を鎌倉地域で展開するグループの総称です。
就学前の子どもを幼稚園や保育園に預けず、保護者が協力し合って主に野外で保育を行います。鎌倉では「なかよし会」が始めた里山保育が発端となり、市内に広まりました。
青空自主保育の保育者であると同時に放課後児童支援員や発達支援サポーターでもある馬場さん。保育士と認定ベビーシッターの資格を持ち、自身も3人のお子さんを成人させている保育のベテランです。
参考:元森絵里子(2003).「「自主保育」の意味と現在-しんぽれん調査報告ー」,『相関社会科学』第13号, P.57.
腰越海岸に集合
AM 9:30。子どもたちが集まって来ました。天気は快晴、気持ちのいい潮風が吹いています。数日前の嵐がうそのように穏やかな朝です。
今日の活動場所は、江の島を望む腰越海岸。海岸は広くて見通しが良く、海も遠浅なので遊びやすそうですね。
参加者は子ども9名、大人8名。ほぼ子ども1人に大人1人の割合になります。
カニ・カニ・カニ!
子どもたちが川で遊び始めたと思ったら、いきなりビッグな獲物を運んで来ました。幅30センチメートルはありそうな、大きなカニです! バケツに入りきらなくて、はみ出しています。
「荒れた後の海は面白いね」とボランティアで見守りをしているお母さんがつぶやきました。2日前に大雨が降ったばかりの海岸には、いろいろな物が流れ着いているのでしょう。
残念ながらカニは生きてはいませんでした。子どもたちは死骸を怖がりもせず、海に返しています。「バイバーイ」。
カニ捕り名人のM君です。毎日4時間、カニを捕っているそう。何やら岩壁に隠れているものを引っ張り出しているようですが、こんな所にカニがいるのでしょうか。
いました。捕まえるまで約2分。お見事です!
ボランティアで子どもたちを見守るお母さんが、ビーチクリーンをしています。ゴミ袋を見た子が、まさかの一言「何か使えるゴミない?」。
せっかく集めたゴミを持って行ってしまいました。落ちている物は何でもおもちゃにしてしまいます。
壊れたバケツをおうちに見立てて、砂浜に立てました。すると、できた家にカニが続々と入っていくではありませんか!
あっという間にカニハウスの出来上がり。
ハウスの中に、カニが横一列に並んでいます。驚く筆者に、M君のカニ捕り仲間であるY君が「涼しい所が好きなんだよ」と教えてくれました。「いつも水の中にいるでしょ」。なるほど、納得。5歳とはいえ、毎日カニを見ている人の言葉には説得力があります。
赤ちゃんのメンバーもいます
0歳の赤ちゃんがいます。お姉ちゃんに付いて来ました。「ここに来ると全然泣かないんですよ」とお母さん。波の音を子守歌に、すやすや眠っています。
家に赤ちゃんと2人でいるとストレスで煮詰まってしまう時もあるけれど、スイミーズに来るとご機嫌になってくれるので助かるそう。
「赤ちゃんがいると異年齢の関わりができ、子どもたちがぐんと成長すると思います」と馬場さん。
赤ちゃんの参加は、子どもたちにも、お母さんにも、赤ちゃん本人にもプラスになる、三方よしの良策のようです。
お弁当よりカニが気になる
「おひさまが頭の上に来たので12時です。お昼にしましょう」馬場さんが子どもたちを呼んでいます。
食べる前に、まずライゲンと呼ばれる手あそび歌と、絵本の読み聞かせ。お弁当を配る係はジャンケンの勝ち抜きです!
おにぎりをパクパク。食べ終わると、すぐにカニを探しに行ってしまいました。
お昼を食べて、もうひと遊び
波を見てはしゃぐ子、大人にしがみ付く子、さまざまです。馬場さんは、子どもたちのどんな反応も、最上級の笑顔で受け入れています。
スイミーズは異年齢保育です。初めの頃は年下の子に遊びを邪魔されるのを嫌がっていた子も、毎日会っているうちに一緒に遊ぶようになっていきます。
「毎日顔を合わせることに意味があるんです」と馬場さん。兄弟のように毎日一緒に過ごしながら、徐々に年の違う子と遊ぶすべを身につけていくとのことでした。
そろそろ終わりの時間ですが、放課後遊びは終わる気配がありません。明日もカニを捕って遊ぶのでしょうね。
ゆったりとした時間の中で大人たちに見守られ「食べて、寝て、夢中で遊ぶ」をひたすらくり返す子どもたち。
迷わず好きな物に手を伸ばし、時を忘れてそれに没頭する揺りかごのような日々。何にも代えがたい子ども時代がここにありました。
代表者より一言
青空自主保育時代に海で遊ぶ子どもたちを見て、海のようちえんをつくりたいと考えるようになりました。
海で遊ぶ子どもたちはケンカも少なく、それぞれが好きなことを生き生きと追いかけていて、目の輝きがいつもと違うと感じたのです。
子どもたちが海で自由に遊べる日常をつくりたい。「これは、やるしかない!」と思ったのです。
同時に、子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿を見てクスッと笑い「子どもっていいなあ、幸せだなあ」と大人が感じてほしいです。親子で一緒に幸せを感じてもらいたい。それも私のミッションだと思っています」
スイミーズ6月度体験WEEK開催
海の近くに住んでいても、母親が独りで乳幼児を連れて海遊びをするのは大変だと思います。
しかし、一緒に楽しむ仲間と経験豊富な保育者のサポートがあれば、湘南の海は親子にとってかけがえのない成長の舞台になるのではないでしょうか。
スイミーズでは6月に無料体験イベントを開催します。問い合わせ・申し込みは公式ホームページから。平日と土曜日、それぞれ1回ずつ体験でき、土曜日は家族の参加も歓迎とのことです。
日程:6月21日(水) 6月24日(土) 6月27日(火)
時間:9:30~13:30
対象:未就学児と家族
場所:鎌倉市腰越海岸
費用:無料
基本情報
【湘南・海のようちえんスイミーズ】
曜 日:週4回(火・水・金・土)/週2回(水・土)
*土曜日は原則家族参加。月1~2回の保護者参加あり
時 間:9:30~13:30
場 所:腰越海岸・江の島・鵠沼海岸等
年 齢:週4回、週2回共に未就学児(兄弟の参加は個別に相談)
入会金:3万円
月 謝:
週4回コース:1万5,000円/月
週2回コース:1万円/月
保険料:1,000円/年
※施設利用料や畑利用の謝礼等は別途実費負担。
問い合わせ:
湘南・海のようちえんスイミーズ公式ホームページ または
Eメール:y.b88415@au.com(馬場)