特別養子縁組で新たに家族となったストーリー-「Adoption for Happiness」プロジェクト発起人・ネルソン聡子さんインタビュー(前編)
神奈川県鎌倉市を拠点に、特別養子縁組が“特別”ではなくなる社会を目指し活動する、ネルソン聡子さん。
「Adoption for Happiness(アダプション・フォー・ハピネス)=幸せになるための特別養子縁組」というプロジェクトを立ち上げ、当事者(産みの親・養子・養親)の生の声を、多くの人に届けようと尽力しています。
ネルソンさん自身、2023年にフィリピンから遠縁の子を迎え、養子縁組家族となった一人です。
今回のインタビュー(前編)では、プロジェクトをスタートするきっかけとなった、ネルソンさんのご経験について伺っていきます。
※「Adoption for Happiness」プロジェクトは、現在クラウドファンディングで支援を集めています。詳細は「CAMPFIRE」をご覧ください。
特別養子縁組とは
特別養子縁組制度とは、さまざまな事情により生みの親のもとでは暮らせないこどもを、自分のこどもとして迎え入れる制度です。法的な親子関係を結ぶため、こどもが生涯にわたり安定した家庭を得ることができます。
娘さんとの出会いから家族になるまで
ネルソンさんと、ご家族について教えてください。
アメリカ出身の夫、娘、そして私の3人で暮らしています。私自身は、海外の映像作品を字幕翻訳する仕事をしています。
生後11ヵ月のころから一緒に暮らし始めた娘は、いま2歳になります。お歌が大好きで、保育園にも通っています。
私の兄家族と一緒にお出かけをしたり、近県にある実家にもよく遊びにいったりしています。
お子さんとはどのようにして出会われたのですか?
娘との出会いは、アメリカに住む義母(夫の母)から「フィリピンに住む遠い親類の赤ちゃんを養子として迎えないか」と提案されたことがきっかけでした。
不妊治療を諦め、次のステップとして特別養子縁組に向けて動き始めていたタイミングだったので、娘との縁を感じました。
2023年12月に特別養子縁組が成立し、法的にも娘と親子関係を結ぶことができました。
娘さんを養子に迎えるまでには、様々なハードルがあったそうですね。
特に大きな壁となったのは、手続きですね。
私たちの場合、支援団体を介さずに、個人と個人の話し合いからスタートしていたため、特に稀なケースでした。また、娘の生まれたフィリピンは「ハーグ国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約」に批准していますが、日本は批准していないという状況も手続きが複雑となる一因でした。
我々夫婦の証明書類はもちろん、産みの親とのコミュニケーション記録を何10ページもコピーし提出したり、10歳以上の娘の親族からはすべて同意書をもらったりと、法的な手続きに必要な書類は多岐にわたりました。
自分たちで一から調べ、弁護士や行政書士の力も借りながら審査に進み、正式に受理されたのは、娘と初めて出会ってからおよそ3ヵ月後のことでした。
乳児期の成長を考えると、3ヵ月はとても長い期間ですね。
そうですね。子どもの負担や安全を第一に考え、基本的には国内の養子縁組が優先されるということもあり、国を跨ぐケースではより慎重な審査が行われます。
ただ、私たちのケースでは、産みの親御さんも子どもを育てる余力がなく、よりよい環境で養育してほしいという希望を強く持たれていました。
子どもが幸せになれる選択肢がそこにあるのであれば、もう少し間口を広げてもらえるとうれしいなとは感じますね。
日本における養子縁組家族への理解
複雑な手続きを経て、ようやく正式な親子関係を結ぶことができたネルソンさん。
娘さんの成長を愛おしく感じる日々。しかし、新たな壁を感じることになります。
養子縁組家族となったことで、周囲からはどのような反応がありましたか?
身近な人には「養子を迎えた」ということをオープンに伝えていました。
アメリカでは家族の形の一つとして養子縁組があたりまえに存在しているので、みんな幸せな報告として受け取ってくれました。
ですが、日本では「特別なこと」「すごいこと」と受け止められることが多かったんです。
日本ではまだネガティブなイメージというか、触れてはいけない、どう捉えていいかわからないテーマとして考えられている人も多いんだと実感しました。
日本では特別養子縁組の仕組み自体あまり知られていないと感じます。
「知らない」「よく分からない」ことに対して身構えてしまうのは当たり前の反応だと思います。
だからこそ、特別養子縁組について多くの人に知ってもらいたい。
海外ではあたりまえとなっている考え方を日本でも広めていきたい。
その想いが原動力となり、「Adoption for Happiness」プロジェクトをスタートしました。
インタビュー(後編)では、「Adoption for Happiness」プロジェクトについて詳しく伺っていきます。
ネルソンさんの活動「Adoption for Happiness」は、クラウドファンディングで支援することができます。期限は2024年7月29日まで。詳細はCAMPFIREをご覧ください。
問い合わせ
Adoption for Happinessプロジェクト
拠点:神奈川県鎌倉市
問い合わせ先:adoptionforhappiness@gmail.com