【鎌倉 イベントレポ】夏休み映画上映会『マイクロプラスチック・ストーリー』-環境を守るために、自ら声を上げる
JR鎌倉駅から徒歩2分。若宮大路に面している鎌倉生涯学習センターにて、環境汚染とその活動について学ぶイベントが開催。
内容は環境活動家である佐竹敦子監督(以下、佐竹監督)の映画『マイクロプラスチック・ストーリー ぼくらが作る2050年』の上映と、佐竹監督と鎌倉市の中学生 原澤幸希さん(以下、原澤さん)による座談会の2部構成。
原澤さんは、鎌倉市が学校給食で使用する牛乳パックのストローをやめるきっかけを作った立役者。座談会ではこのきっかけについても語っています。
第1部 『マイクロプラスチック・ストーリー ぼくらが作る2050年』上映
会場は夏休みに入ったばかりの子どもと親御さん含め、約200人近くが来場。上映時間は約80分。しかしこの80分が実に濃い。
内容は、アメリカのニューヨーク州内レッドフック地区の小学5年生が4年生から始めた、プラスチックゴミと自分たちの生活との関係性、それによる環境への影響を追及、そして自分たちの視点で課題を見つけ、解決のためのアクションを起こす活動を追ったストーリー。
映画が始まると、主人公たちが自主的にプラスチック問題について取り組んでいく姿を、真剣に見つめる日本の子どもたち。ときには「すごい!」と声が上がります。
また映像では、小学生くらいの子どもたちが理解しやすいような工夫が至るところに見られ、大人も見入ってしまうほどに見応えたっぷり。吹き替え版の声優陣に環境活動家たちを起用しているのもご注目。
親子で鑑賞し、家族で環境問題とそのためにできることを話し合うきっかけになること間違いなし。
(自主上映や学校上映も可能なため、詳細は公式HPをご覧ください)
第2部 佐竹監督とゲスト原澤さんによる座談会
佐竹 敦子プロフィール
現在ニューヨークを拠点とするNPO団体カフェテリア・カルチャーにてメディアディレクターをつとめながら、合衆国環境保護庁やニューヨーク市教育委員会と密接に活動中。子どもたちや地域の人々を巻き込みながら、プラスチック汚染問題、そして気候危機問題を啓発する映画やビデオの製作にもあたる。
監督&スタッフ|マイクロプラスチック・ストーリーぼくらが作る2050年より引用
原澤 幸希プロフィール
鎌倉市の中学2年生。小学3年生のときに給食のストロー不使用活動を始める。そのレポートや活動内容を講演会や多くのメディアで発表。今ではNPO法人気候危機対策ネットワーク環境活動家として、またマイクロプラスチック・ストーリーのアンバサダーズとしても活動中。
恥ずかしさに勝つ、意志を貫く強さ
原澤さんの最初のアクションは、学校給食で使われるストローの不使用活動。
小学3年生のときに聞いた、バリ島に住む姉妹がダボス会議で発表したプラスチック製レジ袋ゼロ活動に影響を受けます。その内容はプラスチックゴミが地球環境を壊し、対策としてレジ袋を撤廃するというもの。
早速「私にもできることはないか」と考えた彼女は、学校給食で使用しているストローの使用量を減らすことに着目。
翌日友人たちにこの問題について話し、先生に牛乳をストローではなく直接パックから飲む許可を取り実行に移します。当初は恥ずかしい気持ちに加え、一部の人たちからは「飲み方が汚い」「そんなことしても意味がない」との声も。それでも「私のやっていることは間違っていない」と信じ、卒業までにストロー約1万本を削減。しかも卒業前に市内の公立小中学校において、100%生分解性のストローに変更すると鎌倉市が約束をするまでの影響を与えました。
映画に込めた子どもたちの「純粋な心」
佐竹監督が映画製作活動を始めた2017年頃、当時はまだプラスチック問題を詳細に扱っているニュースをほぼ見なかったことから、まずはその内容を明確に発信しようと決心し、製作にあたります。
日頃の活動のにおいて、「とくに子どもたちはプラスチックゴミが海の動物を苦しめている問題に敏感だ」と、佐竹監督は語り始めます。なかでも興味深いと感じる1つが、子どもたちが海の動物たちと人間の関係性について「不公平である」と捉えていること。そこには2つの意味があると言います。
1つめは作品内で、海の動物にも人間同様に家族がいると訴え、可哀想とは言っていないこと。2つめは人間が自分たちのエゴのために、プラスチックを作り流出させていること。
佐竹監督はこれらが掛け合わさって幸か不幸かではなく、公平ではない不公平という「権利の視点」を持っていると推察します。
「この視点をもっと強くみんなに感じてもらい、子どもたちのそうした純粋な心を表現できるものにしたい」
作品の根底にある声を上げる意味、社会の仕組みを変える意味を考え、行動を起こすきっかけになれたら、と願いを込めて作品を完成させます。
マイクロプラスチック・アンバサダーズに就任してからの心境の変化
原澤さんご自身の心境の変化は、映画を見てプラスチックゴミ問題について表面部分しか認識していないと気づいたこと。
「もっと多くの人にこの問題を深く知ってもらいたい」と思い立ち、ここでも彼女は行動を起こします。映画の内容とご自身の調査内容をまとめ、第2回リビエラSDGs作品マンガ大賞に応募し、見事大賞を受賞。
黒岩祐治(くろいわ ゆうじ)神奈川県知事をはじめ、多くの方々がレポートを見るきっかけとなり、原澤さんの活動がより広く知れ渡りました。
さらに「ストローの不使用活動をもっと大勢の方に知ってほしい」という気持ちが生まれ、アンバサダーズとしてご自身の活動の認知拡大に尽力します。
行動のために、自ら声を上げる大切さ
佐竹監督は来場者に、環境のための3つのアクションを提案。
1つめは自分の行動の言語化。未来や海のこと、どんなことを変えたいか。家族と話す機会があると考えの幅が広がり、それを言語化することで自分のものになることが大事だと述べます。
2つめは生活内でのゴミの削減。まずは家庭内のゴミを1週間溜めて調査と分析。次第に自分で変えられることと変えられないことが判別できるようになるとのこと。実際にゴミを見ることで何を減らすべきかを認識し、次の「声を上げる」行動に移りやすくなる。
その積み重ねが、社会を動かす大きなアクションに繋がっていきます。
3つめはビーチクリーン。ゴミの顔を見られる絶好の機会。そして鎌倉市は海と密接した地域です。しかも主催者は毎月第4土曜日に七里ヶ浜を中心にビーチクリーンを実施中。ぜひ参加をしましょう。
最後に
原澤さんは大人に向けて次のメッセージを送ります。
「活動を継続できたのは、周囲の理解と応援があり、それが心の支えとなったから。子どもにとって新しいことを始めたいと相談しても、否定されることは怖く、諦める要因となる。それを大人の方々はどんなに難しいと感じていても、容認し見守ってもらいたい」。
イベント終了後、佐竹監督と原澤さんへのメッセージカードには、「常にマイバックを持ち歩く」「使い捨て容器をなるべく使わない」といった声が早速上がりました。この記事を読まれた方々も、社会のアクションに繋がるきっかけを何か作れるはず。できることから始め、環境を一緒に守っていきましょう。
イベント詳細
【夏休み映画上映会 『マイクロプラスチック・ストーリー』】
◾️日時:2024年7月20日(土)9:30〜11:50
◾️会場:〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町1丁目10−5 鎌倉生涯学習センター
◾️参加費:無料
◾️主催者:SEVEN BEACH PROJECT