【逗子 イベントレポ】「逗子アートフェスティバル2023」プレイベント~逗子医療センターギャラリー・アーティストインタビュー
逗子市内の各所にアート作品が出没する祭典「逗子アートフェスティバル2023」(主催:逗子アートフェスティバル実行委員会)が、10月7日から開催中です。58年にわたって市民の健康を守ってきた逗子医療センターをギャラリーに転換しアートで埋め尽くしたワークショップ会場で、逗子アートフェスティバル2023の総合プロデューサーである柴田雄一郎さん、写真家のブルース・オズボーンさんのお二人にお話を伺いました。(2023年10月1日実施)
▼前編のイベントレポートはこちら▼
https://shonanjin.com/w/news/zushi_medicalcenter_ws/
柴田雄一郎 インタビュー
10月7日から開催中の逗子アートフェスティバル2023で総合プロデューサーを務める柴田さん。逗子医療センターの空室をアートギャラリーに転換した「逗子医療センターギャラリー」で、現在「青の晩餐」という展示を行っています。
全てを青色で塗り尽くし、斜めに傾いた家具を設置した奇妙な部屋。その狙いは何なのか? 青く染めたカレーやラーメンを食べるワークショップを開催する理由は? 作品に込められた柴田さんの思いやコンセプトについて、語っていただきました。
柴田雄一郎 プロフィール
逗子アートフェスティバル総合ディレクター。佐々木建蔵芸術文化財団所属。今年度の逗子アートフェスティバルでも音楽ユニット「no.9」として、40個のスピーカーで亀ヶ岡八幡宮(はちまんぐう)を音で包む「サウンドインスタレーション」など、音楽面を担当。
普段はビジネス・クリエーティブマネジャーとして企業の新規事業のサポート支援、新規事業立ち上げ支援などで活躍。また自身が構築した、マーケットの新規開拓に役立つ「アート×デザイン思考」について、大学、オンライン等で講座を開いている。
全てを疑う「青い部屋」
──今回の展示、青の晩餐のコンセプトは、柴田さんの亡くなられたご友人、佐々木建蔵氏から引き継いだそうですね。どのような形で引き継がれたのでしょうか。
柴田 佐々木建蔵は高校時代の友人です。一緒に30名ぐらいのアート集団として活動していました。彼がインドに旅行する直前に、作品のコンセプトを書きためたアイデアノートを「全部君に渡すから、僕がもし死んだら20年経過するまで待って、これを使ってほしい」と言って、僕に託したんです。大学生の時でした。彼はインドに行き、そのまま帰ってきませんでした。青の晩餐は、佐々木建蔵のノートに書かれていたアイデアです。作品の現物があるわけではなくて、詩や文章でさまざまな作品のコンセプトが記されているんです。
──コンセプトについて教えてください。
柴田 「全てのものを疑う」。全てを再構築するべきだというのが、佐々木建蔵の主張です。「今あるものって本当なの?」全てを疑ってかかるというか、全てのものに問いを発する。
なにもかもが青色に染まっていて、家具は斜めに傾いている。そんな部屋は日常にはないですよね。そこに身を置くことで、普段自分が当たり前だと思っていたことをいったん疑ってみる。既成概念、思い込みを壊して再構築してみようというコンセプトです。
僕はこれを「アート思考」と呼んでいるんですが、何かに対して問いを投げかけ、新しい回答を作っていくことで、新しい価値やアイデアが生まれます。例えば「何で鳥は飛べるんだろう?」と誰かが思わなかったら、飛行機は生まれていないですよね。「問い」は新規事業、イノベーションにつながりますし、アーティストが常にやっていることでもあるんです。
青い食べ物は本当にまずいのか
──10月14日のワークショップでは、食紅で青く染めたカレーやラーメンを食べるそうですね。これには、どのような意図があるのですか?
青い食べ物って、まずいって言われていますよね。ならば「本当にまずいの、それ?」という問いを発して、実際に食べてみるのが狙いです。
僕は実際にカレーを食べてみたんですが、普通にカレーの味でした。おいしかったです。目を閉じて食べれば、色が青だなんて全く分からない。
青い食べ物はまずいという既成概念で食べるからまずいと思うんです。でも、色に味はない。味は一緒なんです。つまり、物の本質を確かめてみようという意図ですね。
また、そうすることで、いつも当たり前に見ているさまざまな色にありがたみを感じるかもしれない。そういう新しい気付きもあります。
──最後に、逗子アートフェスティバルを見に来るお客さんに一言お願いします。
アートってちょっとハードル高いなって思ってる人も多いと思うけれど、難しく考えないでください。「これは何だろう?」とか「何でこんな無駄なこと、するんだろう?」とか。自分なりの疑問を持って、その謎解きをやるつもりで来てもらうといいと思います。正解はない。自分で考えることが大事なので、自分なりの答えを見つければいい。アートはそういうものだと思います。
──どうもありがとうございました。
〜 go me(ゴミ)〜環境を考える写真展 ブルース・オズボーン
ビーチコーミングで集めた海洋ゴミをアートに再生した展示「〜 go me(ゴミ)〜環境を考える写真展」。ゴミだったとは思えないハイセンスなアート作品の数々は見るだけで楽しくなり、インスタ映えは抜群です! ポップでおしゃれなブルースさんの作品ですが、そこに込められたメッセージは人間愛にあふれたものです。
今回の展示や環境問題について、奥さんの佳子さんと一緒にお話を伺いました。
ブルース・オズボーン(Bruce Osborn) プロフィール
在日約40年。写真家として大手企業の広告写真を多数手がける。1982年から親子をテーマにした写真展「親子の日」シリーズを展開。2014年に制作したドキュメンタリー映画「OYAKO」ではベルリン国際映画祭でベストドキュメンタリー賞を受賞。
葉山に移住したことがきっかけでビーチコーミングを始め、海洋ゴミをテーマにした展示会「Nature Calls」シリーズを開始、環境問題を考える活動を続けている。
──ビーチで拾ったゴミを使って作品を作ろうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか。
ブルース:一番の理由は、すごくきれいだと思ったから。海岸に落ちているプラスチックが、古くなってくると潮でもまれて、だんだん朽ちてくる。ゴミというより、何かきれいなものを拾っている感じで。
最初はそれを写真に撮っていたんだ。ゴミをボックスに並べて下から光を照らす。すごくきれいで。そうしているうちにオブジェクト(作品)もできてきた。
佳子:他の人がシーグラスを探したり陶器の欠片を探したりするのと同じ感覚で、きれいだなって。これは落ちていたライターなんですけど、こうやって撮ってみるとすごくきれいでしょう。
──"Trash to Treasure" ゴミは悪者じゃないとFacebookに書いていらっしゃいましたが、その言葉について簡単にご説明いただけますか。
佳子:人間の生活の中で、ゴミは悪者になっている。でも、ゴミが悪いんじゃなくて、私たちのやり方が悪いんじゃないかっていう考え方です。
ブルース:プラスチックって今の時代は生活の必需品でもあるよね。ないと大変なことになるけれど、たくさん作ってどんどん捨てる私たちの生活スタイルは変えていかないとね!
環境問題に、楽しみながら向き合う
──親子の写真を長年撮っていらっしゃいますが、写真展「OYAKO」シリーズと環境問題は、テーマとして何かつながりはあるのでしょうか。
佳子:親子っていうのは一番小さなユニットで、建物でいったら土台みたいなもの。そこに向き合うことは、社会や環境につながる基礎になると思うんです。
それがやがて人を大事にしたり、物を大事にしたり、自然を大事にしたり。全部、私たちの社会が安定していないと大事にできないものばかり。それなら戦争なんかしたくないよねという思いになってくる。最終的には、どちらのテーマも平和につながっていきますね。
ブルース:自分が生きている間は、大好きな自然を残したいと思ってる。
──今日のワークショップは、会場のメイキングからみんなで作業するのが面白いですね。
ブルース:楽しくなると思っているよ。飾る物をどうしようとか、一緒に考えながら。始まらないと分からない部分が多いから、一緒に楽しんで作ろうと思ってる。
佳子:仲間が増えればブルースの考えてることもシェアできるから、一緒に作業するって大事だなと思います。「一緒にやりませんか?」って。
──作品を見る人に訴えたいメッセージはありますか?
ブルース:Must, Have to, Pressure(ねばならない)から入るより、楽しんでゴミを集めたい気分を作っていけたらいいなと思っている。僕は楽しみながらビーチコーミングをやって、拾ったゴミをコレクションにしているんだ。友達と家に集まって、海で拾ったきれいな物を見せ合ったりして。いろいろな色のライター、ビー玉、乾電池の残り物を瓶に入れてオブジェにしたり。遊び心でね。
佳子:義務じゃなく、楽しくゴミを拾って。自分の宝物にするみたいな意識でみんながゴミに向き合ったら、もっと環境も変わってくるかなって思います。
──今日はどうもありがとうございました。
作品を超えて広がる「アートのよはく」
アート作品に出合った時、人々の受け取り方はさまざまです。それぞれの経験や考え方が作品と化学反応を起こし、時には作家自身も予想しなかった広がりを見せることも。逗子アートフェスティバル2023のテーマは「アートのよはく」。アートが持つ、正解がない魅力を「よはく」と呼ぶのかもしれません。
とはいえ、言葉にならない事を表現するのがアートでも、やはり言語化できる部分はあるはずです。本記事がアーティスト本人の言葉を共有し、みなさんのイマジネーションを自由に広げるきっかけになれば幸いです。
逗子アートフェスティバル2023は、10月29日(日)まで開催しています。
ブルース・オズボーン ワークショップ日程変更
ブルース・オズボーン ワークショップの日程が変更になりました。
【ブルース・オズボーン ワークショップ新日程】
・24日(火)13:00 〜 インスタレーションワークショップ
・28日(土)13:00 〜夕方まで 撮影ワークショップ
・29日(日)13:00 〜夕方まで 撮影ワークショップ
申し込み:ブルース・オズボーン ワークショップ申込みフォーム
イベント詳細
【逗子アートフェスティバル2023 逗子医療センターギャラリー】
日付:2023年10月21日(土)、22日(日)、28日(土)、29日(日)
時間:11:00 〜16:00
場所:逗子医療センター
主催:逗子アートフェスティバル実行委員会
共催:逗子市/逗子市教育委員会
企画・運営:逗子アートネットワーク
協力:アートテラスホーム/有限会社 逗子医療センター/TRIAD
問い合わせ先:
TEL:046-873-1111(逗子アートフェスティバル実行委員会)
Email:zafkouhou@gmail.com(逗子アートネットワーク)
地図
アクセス
京浜急行 逗子・葉山駅南口から徒歩30秒
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